国立代々木競技場第一体育館を語る上で避けて通れないのが、1964年東京五輪のために世界的建築家・丹下健三が設計した吊り屋根構造という圧倒的な建築特徴です。2本の巨大な主柱から垂らされたワイヤーロープで屋根全体を吊り下げる工法により、内部フロアには視界を遮る柱が1本も存在しません。この息を呑む大空間の美しさは、築60年を超えた現在でも唯一無二の存在感を放っています。
しかし、この歴史的名建築には「音響設計」と「アリーナブロック構成」において、現代のライブエンタメ特有の落とし穴が存在します。
【音響の口コミ評価と残響特性のリアル】
SNSや知恵袋等のコミュニティにおいて、代々木第一体育館の音響は「低音が反響してボーカルがこもる」「武道館より聴き取りにくい」というシビアな声が定期的に散見されます。もともと屋内競泳やバスケットボールなどオリンピック競技のために設計されたコンクリート主体の空間構造であるため、現代の密閉型音楽専用ホール(Kアリーナ横浜やぴあアリーナMMなど)と比較すると、どうしても壁面や高天井での音の反射・ディレイ(音の遅延)が発生しやすい傾向にあります。
とはいえ、近年はツアー音響機材(ラインアレイスピーカー等)のデジタルプロセッシング補正技術が飛躍的に進化しており、PAエンジニアの腕次第で音像の輪郭は劇的に改善されています。アリーナ中央付近や1階スタンド前列であれば極めてダイナミックな重低音を体感できますが、2階スタンドの最上段付近やコーナーの窪みエリアでは、依然として高音域の抜けが悪く、MCの反響音が重なって聞き取りづらいケースがあるのは事実です。
【アリーナブロック構成の縦長トラップ】
コンサートごとに異なるアリーナブロック構成ですが、基本的には「A・B・C・D・E」などのアルファベットがステージ側から後方へ向かって割り振られます。ここで注意すべきは、代々木のフロアが細長い楕円形状をしている点です。
武道館のように八角形ですり鉢状に囲む構造とは異なり、エンドステージ配置では後方ブロック(D〜Eブロック付近)がメインステージから直線的に大きく引き離されます。「アリーナ席だから近くで見られる」と過信して現地に足を踏み入れた結果、「スタンド1階の前列席よりも演者が遠く、背伸びをし続けて腰を痛めた」という体験談が後を絶ちません。後方ブロックが割り当てられた際は、無理に肉眼勝負を挑まず、双眼鏡と大型ビジョンを活用した鑑賞スタイルへ早めに切り替えるのが賢明です。