病状が悪化するにつれ、スジンの記憶の崩壊は取り返しのつかない段階へと達します。最も残酷な瞬間は、チョルスに対してかつて愛した不倫相手の名前を呼び、「愛してる」と微笑みかけた場面です。その瞬間、自分が目の前にいる夫を他者と誤認していることに気づいたチョルスは、胸が張り裂けるような絶望に襲われながらも、必死に涙を堪えて受け止めます。
その後、ほんの束の間だけ本来の自我と記憶を取り戻したスジンは、自分が最愛の夫をどれほど深く傷つけたかを理解し、激しい自己嫌悪と悲しみに打ちひしがれます。チョルスにこれ以上惨めな姿を見せたくない、彼の人生を自分の介護で縛り付けたくないと考えたスジンは、一通の手紙を残して姿を消します。
手紙に綴られていたのは、「あなたを忘れることは、私の魂を失うこと。愛しています、私の唯一の記憶」という魂の叫びでした。チョルスは必死の捜索の末、山奥の療養施設に身を寄せているスジンを見つけ出します。しかし、再会したときには、スジンの瞳からチョルスに関するすべての記憶が完全に消え去っていました。
チョルスは諦めませんでした。彼はスジンを連れ出し、二人が初めて出会った「あのコンビニエンスストア」へと向かいます。そこには、チョルスが事前に手配したスジンの家族や友人たちが、あの日と同じ配置で立っていました。チョルスがコンビニの扉を開け、缶コーラを差し出した瞬間、スジンの脳裏に奇跡のように感情が蘇ります。「ここは天国なの?」と涙ぐむスジンに対し、チョルスは「そうだ、天国だ」と告げ、車に乗せて走り出します。後部座席で見つめ合う二人の表情を映しながら、物語は静かに幕を閉じます。