公的な定義では一括りにされる傾向がある一方で、日本語の日常表現において私たちが明確に使い分けているのはなぜでしょうか。その答えは、林と森の語源と漢字の成り立ちに隠されています。
日本語の大和言葉(古語)における「はやし」の語源は、動詞「生やす(はやす)」の名詞形です。木々を育成する、手を入れて生え出でさせるという使役的なニュアンスを含んでおり、古来、人間が生活圏の周辺で手を加えながら増やした木立ちを「はやし」と呼び習わしてきました。
対する「もり」の語源は、動詞「盛る(もる)」の名詞形である「盛り(もり)」から派生したとされています。土や木が自然にこんもりと盛り上がった様、神霊が宿る神聖な山や塚を指す言葉でした。「社(やしろ)」と書いて「もり」と読ませる神社が多いように、古代の日本人にとって森は単なる木材の供給源ではなく、人間がみだりに立ち入ってはならない信仰の対象、こんもりと繁茂した自然そのものを意味していたのです。
漢字の成り立ちを見ても、木が横に2つ並ぶ「林」は平地で木が並び立っている様子を表す会意文字です。一方で「森」は木が上下左右に3つ重なり合っており、木が鬱蒼と密集して深遠な空間を作り出している様を象形化したものです。木の本数そのものよりも、空間の立体感と深さの象徴として漢字が作られたことがわかります。