実際に政令市で暮らす住民や現場の職員は、この制度をどう受け止めているのか。編集部が複数の自治体関係者および住民へ取材を行ったところ、華やかなブランド力の裏にあるリアルな摩擦が浮かび上がりました。
「政令市になって最も実感したのは、パスポート取得や児童手当、福祉関連の手続きが近所の区役所だけで完結する利便性です。かつてのように県の出先機関まで足を運ぶ必要がなくなりました」(静岡市在住・40代住民)
こうした日常の手続きスピードや、大都市としての知名度向上、企業誘致における信用力は確かに大きなメリットです。一方で、行政区が設置されたことによる思わぬ弊害を指摘する声も少なくありません。
「区役所という組織階層が市役所本庁との間に挟まることで、かえって手続きの稟議ルートが複雑化しました。また、区ごとに議員定数が割り振られるため、全市的な大局観を持った議論より、各区の利権調整に時間が割かれる場面も目立ちます」(相模原市・元自治体職員)
さらに現場で深刻なのが、都道府県との「二重行政」による摩擦です。県庁所在地が政令市である場合、同一エリア内に県庁と政令市役所という2つの巨大官僚機構が存在します。産業振興や観光戦略、大型文化施設の建設などで方針が対立し、調整に多大なエネルギーが費やされる構造は、住民目線では「税金の非効率な重複」として映っています。