近年の婦人科手術は低侵襲化が進み、開腹手術に比べて腹腔鏡下手術では術後3〜5日程度での早期退院が一般的になりました。しかし、この「傷が小さく、身体の表面は元気に見える」という利点が、患者自身の心理に思わぬ落とし穴を作り出しています。
患者の手記や術後アンケート、外来現場での聞き取り調査では、次のようなリアルな証言が数多く寄せられています。
「お腹の表面の傷が痛まないため、退院後1週間で掃除機をかけ、スーパーで重い荷物を持って買い物をしてしまった。その日の夜、急にドバッと鮮血が出て救急搬送された」(40代・会社員)
「在宅勤務だからと退院翌週から長時間のデスクワークを再開したところ、下腹部に強い圧迫感が生じ、止まりかけていた茶褐色のおりものが真っ赤な出血に逆戻りした」(50代・主婦)
医学的に、子宮を摘出した後の骨盤底は、支持組織を切り離されて非常に不安定な状態にあります。歩行、長時間の座位、重い荷物の持ち上げ、排便時のいきみなどは、すべて腹圧の上昇を招きます。腹圧が高まると、癒合途上にある腟断端に直接テンション(牽引力)がかかり、新生した微細な毛細血管や脆弱な肉芽組織が引き裂かれて再出血を起こすのです。
特に「仕事復帰後の出血再発」は臨床上非常に頻度の高いトラブルです。体表の回復スピードと深部組織の修復スピードには約4〜6週間のタイムラグが存在することを認識し、退院後1ヶ月間は重労働や過度な運動を厳に慎む必要があります。