ネット発のブームに目をつけたのが、ダンスミュージックの覇者であった大手レコード会社・エイベックス(avex)でした。2005年、エイベックスは日本国内での販売権を獲得し、公式CD『DISCO-ZONE〜恋のマイアヒ〜』をリリース。プロモーションとして、例のFlash動画に登場していた猫のキャラクターを「のまネコ」と命名し、グッズ展開や商標登録出願に踏み切ったのです。
この瞬間、ネットコミュニティは怒りの業火に包まれました。なぜなら、のまネコの外見は、2ちゃんねらーたちが何年もかけて共有・発展させてきたアスキーアートの代表格「モナー」と酷似していたからです。エイベックス側は「モナーをモチーフに独自のアレンジを加えた新キャラクター」と主張しましたが、ネットユーザー側には「みんなの無償の共有財産(パブリックドメイン的な文化)を、巨大企業が私物化して商売に利用した」と映りました。
当時のネット掲示板には、次のような激しい声が溢れ返っていました。
「俺たちが面白がって作っていた文化を、後から土足で踏み込んできて『ウチの権利です』と囲い込むのか」
「Flashを作った職人への敬意がまるでない。他人の褌で相撲を取るにも程がある」
事態はエイベックスへの電凸(抗議電話)や不買運動にとどまらず、当時の松浦勝人社長(現会長)個人への批判、さらには本社への脅迫・殺害予告にまでエスカレートし、警察が捜査に乗り出す刑事事件へと発展。最終的にエイベックス側は「のまネコ」の文字商標出願を取り下げる異例の事態に追い込まれました。この事件は、インターネットにおける「ミームの所有権」をめぐる世界初の重大な摩擦事例として、今なおメディア論の教科書に刻まれています。