中原朋哉のタクトは、単に音を整えるだけではない。彼はクラシック音楽が持つ「毒」や「情熱」をストレートに表現することを厭わない。クラシックは退屈な高尚趣味ではない、という強いメッセージがそこにはある。プログラムの解説冊子ひとつをとっても、学術的な難解さを排し、現代の社会情勢や人間の心理に引き寄せた血の通った言葉で綴られている。
こうした地道なアプローチが功を奏し、コンサート会場には若い世代の姿が目立つようになった。スマートフォンの画面から流れる安易なコンテンツに慣れた若者たちが、生の楽器が空気を震わせる瞬間に息を呑む。その光景こそが、彼らの挑戦の成果を物語っている。