まずは、歌の基本データ、原文、そして正確な現代語訳を押さえましょう。高校古典の教科書や大学入試でも極めて出題頻度が高い作品です。
【題詞】
山上憶良臣、宴(うたげ)を罷(まか)る歌一首(山上憶良臣罷宴歌一首)
【原文】
憶良等者 今者将罷 子将哭 其彼母毛 吾乎将待曽
【訓読文】
憶良(おくら)らは 今は罷(まか)らむ 子泣くらむ それその母も 吾(あ)を待つらむぞ
(※第4句は「そのかの母も」「其(そ)の彼の母も」と訓むテキストもあります)
【現代語訳】
「憶良めは、もうこれでお暇(おいとま)いたしましょう。家では今ごろ子どもが泣いているでしょうし、その子の母(私の妻)も私を待っていることでしょうから。」
題詞にある「罷る(まかる)」は、「退出する」「退出申し上げる」という意味の謙譲語です。上司や高貴な人々がそろう宴席から席を立つ際、一座を白けさせずに品格を保ちながらスマートに退席するための「宴席の挨拶歌」として詠まれました。