オープン初年度には年間100万人以上の来場者を記録し、華々しいスタートを切ったザウス。しかし、その輝かしい歴史はわずか9年余り、2002年9月30日に幕を閉じました。なぜこれほどの巨額施設が早期の解体へと追い込まれたのでしょうか。
第一の要因は、天文学的なランニングコストとエネルギー消費です。
東京湾岸の湿潤かつ温暖な環境下で、巨大ドーム全体の室温を氷点下近くに保ち、良質な雪を維持し続けるには、莫大な電力と冷凍設備稼働費が必要でした。年間の維持維持費・電気代だけで数十億円規模にのぼり、損益分岐点が極めて高い事業構造となっていたのです。
第二の要因は、スキーブームの急速な沈静化です。
1990年代中盤をピークに、若年層のレジャーの多様化やスノーボードへの移行、景気後退によるレジャー消費の冷え込みが直撃。最盛期には4,000円〜5,000円台(2時間利用)だった入場料金設定は、客足が落ちると同時に重い足かせとなりました。
第三の要因は、「有期限借地」と都市計画上の戦略転換です。
実はザウスは、建設当初から「恒久施設」ではなく、周辺再開発の進捗を見極めるための時限的プロジェクトという側面も持ち合わせていました。累積赤字を垂れ流し続けるよりも、早期に巨額の減損処理を行い、土地の価値を住宅地・商業地として再配分したほうが三井不動産グループ全体の資産価値向上に資するという、冷徹かつ合理的な経営判断が下されたのです。