「ヴィア・デッラ・キエーザ(Via della Chiesa)」という言葉を聞いて、イタリア・トスカーナ州の州都フィレンツェの街並みを即座に思い浮かべる方は、相当のイタリア通と言えます。この名称はイタリア語で「教会通り」を直訳したものであり、アルノ川の南側に位置する下町「オルトラルノ地区」に実在する歴史ある通りの名です。
オルトラルノ地区は、観光地化された華やかな中心街とは一線を画し、古くから革職人や家具修復士、金銀細工師などの工房が軒を連ねる職人の街として知られています。その一角を貫く教会通り(Via della Chiesa)周辺には、地元住民が仕事終わりにふらりと立ち寄り、気取らない肉料理や素朴な手打ちパスタをキャンティワインとともに流し込む、飾らないトラットリアが今も息づいています。
当店舗がこの名を冠した背景を取材すると、明確なフィロソフィーが浮かび上がってきます。それは「日本風に過度なアレンジを加えるのではなく、フィレンツェの路地裏にある土着的な空気感と、職人の頑固な手仕事をそのまま日本の食卓へ届ける」という強烈な原点回帰の意思です。生半可なラグジュアリー路線を追わず、塩気やハーブ、オリーブオイルの青々しい苦味さえも現地仕様で貫くその矜持が、店名そのものに刻まれています。