一見すると複雑極まりない記号図ですが、使われている基本要素は驚くほど限られています。紙面に登場する主要な記号の意味と役割を整理すれば、パズルのピースが噛み合うようにスラスラと読み解けるようになります。
まず押さえるべきは、骨格を作る「リング(Ring)」と「チェイン(Chain)」の2大構造です。編み図上で完全な丸(円形)として描かれているのがリングであり、シャトル単独の糸を使って結び目を引き締め、輪の形に成形する技法を指します。一方、リング同士を繋ぐアーチ状の曲線として描かれているのがチェインです。チェインを編むには、シャトルだけでなくシャトルと繋がる糸玉(玉糸)の2系統が必要となります。
記号図の線上に書かれている「3」「4」「5」などの数字は、すべて「ダブルステッチ(表目と裏目を1組とした目)」を何回編むかを表しています。そして、数字の間に挟まれる「-(ハイフン)」や、線の外側に小さく飛び出たヒゲのような突起マークが「ピコット(Picot)」です。ピコットはレース特有の透かし模様を演出する装飾であると同時に、次の段や隣のモチーフと糸を連結する「ジョイン箇所」としての重要な役割を担っています。
また、図面の中で初心者が最も見落としやすいのが「進行方向の反転指示(リバースワーク:RWまたはREV)」です。リングを編み終わった後にモチーフを上下または裏表にひっくり返してチェインへ移行する指示であり、この反転を忘れると編み図通りの同心円状に模様が展開せず、作品が内側に丸まって歪んでしまいます。