海外の合法国で「安楽死」や「医師による自殺幇助」に用いられる主要な成分は、中枢神経抑制作用を持つバルビツール酸系に分類される薬物です。なかでも臨床現場で最も広く採用されている安楽死の薬剤名が、ペントバルビタールナトリウム(Pentobarbital Sodium)です。
ペントバルビタールは、かつて麻酔薬や重度の不眠症治療薬として医療現場で使用されていました。この成分は脳内の抑制性神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)の受容体に結合し、脳幹の機能を強力に遮断します。致死量を経口摂取または点滴によって体内へ投与すると、患者は通常数分から10分以内に深い昏睡状態へ移行。その後、痛覚や苦痛を感じることなく呼吸中枢が麻痺し、心停止へと至るプロセスをたどります。
投与時の苦痛を最小限に抑えるため、多くの合法国では胃粘膜を保護し嘔吐を防ぐ制吐剤を事前に服用させることがプロトコルとして確立されています。患者が激しい苦痛や恐怖を感じながら息絶えるのではなく、医学的コントロール下で「眠るように意識を失わせる」メカニズムが、この成分が選択され続ける最大の理由です。