『ハズビン・ホテル』の主人公チャーリーが開設した「更生ホテル」の第1号入居者であるエンジェル・ダストは、表向きは地獄のエンターテインメント界に君臨する華やかなセレブリティです。しかし、その正体は幾重もの業と痛みを背負った蜘蛛の悪魔(Spider Demon)に他なりません。
公式設定およびクリエイターのヴィヴィアン・メドラーノ(Vivienne Medrano)氏の明かしたバックストーリーによると、エンジェルの本名は「アンソニー(Anthony)」。生前は1930〜1940年代のニューヨークで暗躍したイタリア系マフィア組織の一員として生きていました。
彼の死因は1947年の麻薬過剰摂取(オーバードーズ)です。彼が命を落とす直接の原因となった薬物こそが、当時裏社会で流通し始めていた強力な麻薬「PCP(フェンサイクリジン)」の俗称である「エンジェルダスト」でした。自らの命を奪った猛毒の名前を地獄での芸名として名乗り続けている事実は、彼の自己破壊的なアイデンティティと過去への執着を残酷に象徴しています。
生前の家族構成としては、マフィアのボスであった厳格な父親、同じく犯罪組織に深く関わっていた兄のアラハクノ(Arackniss)、そして心を通わせていた双子の妹モリー(Molly)の存在が明かされています。父親や兄も死後は地獄に堕ちて蜘蛛の悪魔となっている一方、妹のモリーだけは天国(ヘブン)へ昇天したとされており、家族間での魂の分断がエンジェルの孤独をより一層深める要因となっています。