一般的な家庭における親子関係と異なり、歌舞伎の世界における親子は「師匠と弟子」という厳しい主従関係を内包しています。4代目橋之助自身、過去のインタビューや手記において「家では優しい父親であっても、稽古場や楽屋に入った瞬間、一切の甘えが許されない師匠になる」とその厳しさを語っています。
特に『連獅子』の親子共演において、父・芝翫が見せる指導は苛烈を極めました。千尋の谷に我が子を突き落とし、自力で這い上がってきた者だけを育てる獅子の如く、父は舞台上で背中を見せ、息子はその巨大な背中を必死に追いかけ続けてきました。
客席から観劇した劇評家やファンからは、「成駒屋の『連獅子』には、作り物の演技を超えたリアルな親子の血の通い合いがある」と高く評価されています。家庭内での会話以上に、舞台上の毛振りや見得の交歓を通じて魂を受け渡す関係性こそ、中村芝翫・橋之助親子の真骨頂と言えます。