物語は、青砥が持病の検査のために訪れた狭山台病院の売店で、店員として働く須藤の姿を見かける場面から幕を開けます。中学時代に憧れの念を抱いていた青砥は思い切って声をかけ、35年の空白を埋めるようにふたりの交流が始まります。
高級レストランでのデートとは無縁のふたりが重ねるのは、駅前の居酒屋で酒を酌み交わし、コンビニの缶チューハイを片手に夜道を散歩し、ベンチで煙草を吸いながら交わす雑談の数々です。お互いの失敗に満ちた過去や、家族関係の悩み、老いていく身体への不安をさらけ出し合う中で、ふたりは次第に肌を重ね、自然な形で共同生活を意識し始めます。
派手な愛の言葉やドラマのような告白はありません。「一緒に暮らそうか」という提案に、現実的な生活費の分担や親の面倒について淡々とすり合わせる様子は、酸いも甘いも経験してきた50代ならではの誠実な距離感を描き出しています。