本作の評価を決定づけたもうひとつの重要要素が、イラストレーター・ヤマコ氏が手掛けた公式MVのアニメーションドラマです。MVに登場する主な人物は、ボーイッシュで明るい茶髪ショートの少女、清楚でおとなしい黒髪ロングの少女、そして2人の共通の友人である男子生徒の3人です。
MV前半では、3人が放課後を共に過ごす眩しい日常が描かれます。しかし物語が進むにつれ、親友同士である2人の少女が、同じ男子生徒に対して恋心を抱いている事実が明らかになります。友情を壊したくない葛藤と、どうしても諦めきれない恋心。雨宿りのシーンや図書室での視線、ノートをめぐる小さな出来事を通じて、登場人物たちの微妙な関係性が繊細な筆致で積み重ねられていきます。
ファンの間で長年議論を呼んでいるのが、その「切なすぎる結末」です。物語のクライマックス、文化祭の夕暮れ時に男子生徒へ想いを告げたのは黒髪の少女でした。茶髪の少女は、2人が結ばれた瞬間を遠くから見つめ、溢れ出る涙を拭いながらも、大好きな親友と好きな人の幸せを認めて笑顔を作ろうとします。「誰かの恋が実る裏側で、静かに散っていくもうひとつの恋がある」というリアリズム。これこそが、本作のMVが単なるプロモーション映像を超え、1本の青春短編映画として語り継がれている理由です。