卓越した洞察力の源泉は、その徹底した学術的訓練と現場重視のフィールドワークにあります。東京都立戸山高等学校を経て東京大学法学部を卒業した御厨氏は、同大学院法学政治学研究科へ進学。近代日本政治史を専攻し、政治学者・岡義武氏らの学統を受け継ぎながら研究者としての基盤を築き上げました。
東京都立大学法学部教授、東京大学先端科学技術研究センター教授、同大学院総合文化研究科教授などを歴任。その輝かしい学歴と経歴の中で最も特筆すべき金字塔が、日本におけるオーラルヒストリー(口述記録)手法の確立です。公文書や公式発表だけでは決して見えてこない「権力の裏舞台」や「意思決定者の肉声」を体系的に聞き取るプロジェクトを指揮し、後藤田正晴氏、宮澤喜一氏、中曽根康弘氏といった歴代の実力者たちから膨大な証言を引き出しました。
単なる回顧録に終わらせず、綿密な文献照合を行いながら相手の自己正当化を巧みに崩していくインタビュー手法は、学界のみならずジャーナリズムの世界にも革命をもたらしました。一次史料と当事者の証言を突き合わせる強固な作法こそが、現在の御厨氏の解説に揺るぎない説得力を与えています。