婦人科領域で頻用される漢方薬には、当帰芍薬散のほかに「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」が存在します。これらは「三大婦人科漢方」と総称されますが、それぞれ適応する体質(証)が全く異なります。自分に合わない処方を選ぶと、効果が得られないばかりか不快な症状が悪化することすらあります。
薬局や医療機関の処方データによると、使い分けの最大の軸は「体力の有無(虚実)」と「気・血・水のどこにトラブルがあるか」です。当帰芍薬散は、体力が低下して貧血傾向、顔色が悪く冷えが強い「虚証(きょしょう)」の人に用いられます。これに対し、加味逍遙散はイライラや不安など「気」の滞り・高ぶりを併せ持つ中間証向け、桂枝茯苓丸は体力があり赤ら顔でがっしりした「実証(じっしょう)」の血行不良(瘀血)向けです。
特に悩ましいのが「当帰芍薬散と加味逍遙散は併用してよいのか」という疑問です。専門薬局の薬剤師による処方解析では、両者には当帰・白朮(または蒼朮)・茯苓・芍薬という4つの生薬が重複しています。生薬の働きとして、当帰芍薬散が身体を温めて水分を巡らせる方向を持つのに対し、加味逍遙散は柴胡や薄荷・山梔子を含み、上半身の熱を冷まして発散させる方向を持っています。安易な自己判断での併用は互いの薬効を打ち消し合ったり、生薬の過剰摂取につながったりするため、専門医の明確な指示がない限り同時服用は避けるべきです。