なぜ、これほどまでに澄み渡るのか。その答えは、背後にそびえる古生層の石灰岩山地にある。約2億5000万年前の海底堆積物に端を発するこの分厚い岩盤層は、天然の巨大な精密フィルターだ。地表に降り注いだ雨水は、気の遠くなるような時間をかけて亀裂を浸透し、炭酸カルシウムを適度に溶かし込みながら、不純物を極限まで削ぎ落とされていく。
日量約2万トンとも言われる湧出量は極めて安定しており、水温は年間を通じて約16度を維持する。夏は肌を刺すように冷たく、冬は湯気のような水蒸気をかすかに立ち上らせる清冽な水。1985年に環境省(当時・環境庁)によって名水百選へと選定された事実は、単に水質の良さを示すだけでなく、地域住民が何世代にもわたって水源林の荒廃を防ぎ、生活排水の混入を厳しく戒めてきた防衛の証左でもある。