靴選びにおいてネット上に溢れる情報の中には、重大な誤解を招く俗説が少なくありません。特に注意すべきは「ストレートチップなら何色でも冠婚葬祭に使える」「メダリオン(穴飾り)があってもストレートチップだからフォーマルである」という誤った認識です。
内羽根ストレートチップ茶色の着用マナーと限界
紳士服飾の基本原則において、ブラウン(茶色)は元来「カントリー・狩猟・休日の装い」に位置づけられる色です。したがって、内羽根ストレートチップ茶色の着用マナーとしては、平日のビジネスシーンやカジュアルなパーティー、二次会までの着用に限定されます。格式高い結婚式の本式典(親族や主賓として出席する場合)や、とりわけお葬式などの弔事において茶靴を履くことは絶対のタブーです。茶色のストレートチップは洗練されたお洒落を演出できる一方で、フォーマルウェアとしての汎用性は黒に比べて著しく制限される事実を理解しなければなりません。
パーフォレーションやメダリオンの装飾がもたらす格式の低下
もうひとつの盲点は、つま先の切り替え部分に施された穴飾り(ブローギング)です。穴飾りが一切ないシンプルなストレートチップが格式最高峰であるのに対し、ライン上に小穴を開けた「パンチドキャップトゥ」、つま先全体に装飾を施した「セミブローグ」などは、装飾が増えるにつれてフォーマル度が下がります。これらは英国貴族が泥炭地を歩く際、水はけを良くするために開けた実用孔が発祥であるため、格式の高い儀式や弔事には適しません。「ストレートチップ」という名称が付いていても、余計な装飾が施されていない「パンチングなしのプレーンな黒」を選ぶことが失敗を防ぐ鉄則です。