同人文化を語る上で欠かせないのが、親告罪と非親告罪の違いです。従来の日本の著作権法では、著作権侵害は権利者自身が告訴しなければ警察が公訴を提起できない「親告罪」に設定されていました。そのため、権利者が黙認している限り、第三者や警察が介入して即売会を摘発することは原則としてありませんでした。
しかし、TPP11(環太平洋パートナーシップ協定)の発効に伴う法改正により、2018年末から著作権侵害の一部が「非親告罪化」されました。この改正当初は「コミケ文化が終わるのではないか」と大きな動揺が走りましたが、結果として通常の二次創作が根絶やしにされることはありませんでした。
非親告罪が適用されるのは、以下の3要件をすべて満たす極めて悪質なケースに限定されたためです。
① 対価を得る目的、または権利者の利益を害する目的があること
② 原作のまま複製して公衆に提供・提示すること
③ 原作の市場価値を害し、権利者の得られるべき経済的利益を不当に奪うこと
独自の解釈や画風で描かれる同人誌やファンアートは「原作のままの複製」に該当せず、既存のコミックマーケット同人規約などの自主ルールに従う限り、警察が独断で摘発に踏み切るリスクは最小限に抑えられています。同人イベントが現在も存続できているのは、この法的な例外規定の緻密な設計があるからです。