時計の針を1990年代半ばへと巻き戻そう。舞台は東北最大の歓楽街として知られる仙台市国分町。夜の熱気に包まれたバーのカウンターで、一人の常連女性客が「お酒に弱いけれど、みんなと一緒にカクテルを楽しみたい」と漏らした。その願いに応えたのが、当時店に立っていたバーテンダーの黒澤亮氏である。
黒澤氏は、当時まだ新しかったピーチリキュールをウーロン茶で割るアイデアを思案した。甘さを適度に抑えつつ、アルコール度数を下げて飲みやすく仕上げた一杯は、瞬く間に彼女の心をつかんだ。その女性客が大のレゲエ音楽ファンであったことから、感謝と敬意を込めて「レゲエパンチ」と命名されたという。国分町の小さなバーカウンターで生まれた一杯が、後に全国を席巻するカクテルの第一歩となったのだ。