実力派女優の安達祐実と、奇才として知られる安達寛高。このふたりが同じ現場で火花を散らすという事実だけでも、作品への期待感は跳ね上がる。人間の心の奥底に潜む狂気や愛憎を描かせたら右に出る者がいない二人の才能が、見事な相乗効果を生み出している。
安達祐実演じる主人公は、過去の記憶を失いながらも不可解な事件の核心へと惹きつけられていく複雑な役どころだ。緻密に計算された安達寛高の脚本と演出に対し、安達祐実が直感と繊細な表現力で応えるやり取りは、現場に異様なまでのピリッとした緊張感をもたらしている。一瞬の目線の動きや呼吸の乱れすらも計算し尽くされた心理描写は、観る者の心を揺さぶらずにはいられない。