では、基礎自治体の役割と仕事詳細を現場目線で見ると、どのような実態があるのか。地方自治法上、市町村の職責は「地域における行政全般」と抽象的に記されているが、実務は住民の生存と尊厳を支える具体的な手続きの連続だ。
市町村の管轄と住民サービスの主要領域は、主に以下の5分野に集約される。
- 身分関係・住民登録:戸籍謄抄本の発行、住民票の管理、マイナンバーカードの交付、印鑑登録。
- 健康・福祉基盤:国民健康保険の運営、国民年金の申請受付、介護保険事業の運営、児童手当の給付、認可保育所の運営指導。
- 公衆衛生・環境管理:家庭ゴミの分別収集と焼却施設運用、上下水道の維持、狂犬病予防やペット登録、火葬場の管理。
- 初等・中等教育支援:公立小学校および公立中学校の校舎建設・設備保全・学級編成(教員の給与負担や人事権は都道府県にあるが、校舎や備品の現場管理は市町村が担う)。
- 地域防災とインフラ:市町村道・町道の補修、ハザードマップの作成・配布、避難所の開設と運営、消防団の組織化。
この仕事の広範さは、地方自治の美徳であると同時に、現場の職員に凄まじいプレッシャーを与えている。
【実態検証】自治体職員の手記と住民目線で見えたサービスの格差
ある東北地方の人口1万人規模の町役場に勤務する現役職員が執筆した内部手記には、次のような生々しい告白が綴られている。
「都市部の市民からは想像もつかないだろうが、小さな町役場では一人の職員が『産業振興』『観光イベント』『鳥獣被害対策』『空き家管理』を同時に兼務している。窓口で住民の怒号を受け止めながら、夜はイノシシ捕獲の現地確認に走る。専門職を雇う財政的余裕はなく、一人ひとりの職員の滅私奉公でインフラが辛うじて維持されているのが現実だ」
SNSやネット掲示板上でも、自治体の規模による行政サービスの格差に対する住民のリアルな声が噴出している。「隣の市は子どもの医療費が18歳まで完全無料なのに、うちの町は所得制限付き」「ゴミ袋の指定価格が隣の自治体の3倍もする」といった不満は日常茶飯事だ。基礎自治体は住民に最も近い存在だからこそ、自治体の財政力の多寡がダイレクトに住民生活の利便性に直結してしまう。