相撲ファン初心者が抱きやすい疑問の筆頭が、「なぜ圧倒的な成績を残した横綱や大関が三賞をもらえないのか」という点です。日本相撲協会の規定において、三賞の選考対象は「関脇以下の幕内力士」と明確に定められています。
この規定が設けられている背景には、大相撲が持つ厳格な階級社会の論理と、制度設計上の明確な目的が存在します。
- 最高位力士としての義務と格式:横綱・大関は「勝って当然」「優勝を争って当然」の地位として遇されています。上位陣を破ること(殊勲)や、二桁勝利を挙げること(敢闘)は職責の範疇であり、別途表彰する性質のものではないという伝統的な理念が根底にあります。
- 平幕・役力士のモチベーション向上:三賞が創設された昭和22年当時は、戦後の混乱期の中で大相撲の人気を再興させる必要がありました。上位陣に立ち向かう平幕力士の闘志を奮い立たせ、土俵全体の熱量を高めるインセンティブとして設計された経緯があります。
- 大関昇進への客観的指標:関脇・小結が三賞をコンスタントに受賞することは、「三役で3場所連続33勝」という大関昇進の目安において、内容の充実度を裏付ける決定的な補強材料となります。
つまり、横綱・大関は「賞を与える側(目標とされる壁)」であり、三賞は「そこに挑み這い上がろうとする力士への勲章」という明確な役割分担がなされているのです。