つくばKEKの心臓部を担うのが、世界最高性能を誇る3つの巨大実験装置です。それぞれの役割と研究目的を理解すると、現場を訪れた際の感動は格段に深まります。
第一の柱が、周長約3kmの地下トンネルに設置されたSuperKEKB 加速器です。電子と陽電子をそれぞれ逆方向に光速近くまで加速し、髪の毛の太さの数百分の一という極小スポットで正面衝突させます。ビーム同士を極限まで絞り込んで衝突頻度を高める指標「ルミノシティ」において世界記録を更新し続けており、人工的にビッグバン直後のエネルギー状態を再現しています。
第二の柱が、その衝突地点に鎮座する超大型測定器Belle II 測定器です。高さ約8メートル、重量約1,400トンにも及ぶこの巨大構造体は、何層もの超精密センサーで覆われており、衝突によって生まれる無数の素粒子の軌跡とエネルギーを一瞬で記録します。標準理論では説明できない「未知の物理現象」やダークマターの正体に迫る国際共同実験が、世界25以上の国・地域から集まった研究チームによって進められています。
そして第三の柱が、物質・生命科学研究の中核であるフォトンファクトリー 放射光施設(PF)です。加速された電子が軌道を曲げられる際に放つ強力な光(放射光)を利用し、タンパク質の立体構造解析やナノ材料の原子配列を可視化します。製薬会社による抗ウイルス薬の設計や、全固体電池の内部挙動解析など、私たちの生活に直結するイノベーションがここで生まれています。