「帰宅」という行為は、大都市圏における防災・危機管理の観点からも極めて重大な論点です。東日本大震災の発生時、首都圏では公共交通機関の麻痺により推計515万人もの帰宅困難者が発生し、車道の渋滞や歩道の混雑によって緊急車両の通行が著しく妨げられました。
これを受け、東京都をはじめとする各自治体では「帰宅困難者対策条例」を制定しています。その根幹にある教訓は「災害発生時は、むやみに移動を開始せず、安全な場所に留まる(一斉帰宅の抑制)」という原則です。
企業には全従業員が3日間施設内に待機できるよう、飲料水(1人1日3リットル、計9リットル)や非常食、毛布などの備蓄が努力義務として課されています。「何が何でも歩いて帰宅しようとする行為」は、二次災害に巻き込まれるリスクや救助活動を阻害する危険を孕んでいるため、災害時における帰宅は「安全が客観的に確認された後に計画的に行うもの」へと社会通念がアップデートされています。