当時、テレビ朝日の中継を通じてお茶の間に届けられたその映像は、今なおスポーツニュースや各種の野球ドキュメンタリー番組で何度も再放送されている。カメラが捉えていたのは、二塁上で何事もなかったかのようにユニフォームの泥を払う鳥谷のクールな表情だった。
だが、後の取材や関係者の証言によれば、ベンチに戻った鳥谷の手はわずかに震えていたという。極度の緊張とプレッシャー、そして仕事を成し遂げた安堵感。冷徹なポーカーフェイスの裏側に隠された熱い情熱と葛藤を伝える独占エピソードは、見る者の心を揺さぶらずにはいられない。画面越しには見えなかった人間ドラマの深みこそが、この名場面を風化させない最大の魅力だろう。