「食器は料理の着物である」との名言を残し、食の美と本質を徹底的に追及した大正・昭和の美食家、北大路魯山人。もし彼が現代の神奈川の寿司食べ放題を目にしたら、果たしてどのような言葉を残すだろうか。魯山人は食材そのものの滋味と、それを引き出す料理人の矜持を何よりも重んじた。
現代の進化系食べ放題は、かつて食通たちが懸念した「質の低下」とは無縁の世界を見せている。器の選定から醤油のブレンド、赤酢の仕込みに至るまで、細部にこだわり抜いた握りが次々と提供される。無制限あるいは定額という枠組みの中で、美食の審美眼を満たす探求が続けられている点に、現代の日本料理が到達した新たな面白さがある。