ポルトガル船がもたらした南蛮菓子をルーツとする長崎カステラ。かつて出島を通じて輸入された砂糖は、薬としても重宝された稀少品だった。その砂糖を贅沢に使った長崎の菓子文化は、第12代店主・福田喜代七が中国から渡来した技術を取り入れ、卵の泡立ちを極限まで高めたことで現在の黄金色のスポンジへと開花した。
多くの人が福砂屋のカステラを食べて驚くのが、底に残るザラメ糖の存在だ。実はこれ、底に砂糖を敷いて焼いているわけではない。生地を撹拌する際、すり減らされずに残った角砂糖大のザラメが、オーブンの中で自然と底へと沈降していく。沈みすぎず、溶けきらず、絶妙な加減で底にとどまらせる。この奇跡的な沈降バランスこそ、職人の攪拌技術と火入れの温度管理が成し得る究極の技なのだ。