今でこそ国民的俳優として称賛される小向文世ですが、その若い頃の経歴は壮絶な下積みの連続でした。北海道三笠市出身の青年は、美術学校を卒業した後に芝居の道を志し、演出家・串田和美氏が率いる伝説の劇団「オンシアター自由劇場」に入団。約19年間にわたり舞台俳優として情熱を注ぎ込みました。
しかし、42歳の時に劇団が解散。突如として映像の世界へ放り出されたものの、当時は無名に等しく、ドラマや映画のオーディションを受けても落選が続く日々でした。生活費を工面するために借金を重ね、預金残高が底をつきかけた当時の心境について、過去の特番インタビューでは「毎晩のように家族の将来を考えて眠れなかった」と生々しい告白を残しています。
転機が訪れたのは2001年、47歳の時に出演したフジテレビ系ドラマ『HERO』でした。温厚でコミカルな事務官・末次隆之役が見事にハマり、全国的な大ブレイクを達成。以降、映画『アウトレイジ』シリーズで見せた冷徹な刑事役や、ドラマ『コンフィデンスマンJP』のリチャード役など、唯一無二の個性を確立することに成功しました。