死刑執行後、最大の懸案事項として浮上したのが「遺骨の引き渡し問題」でした。火葬された遺骨と遺髪は、教団後継組織による神格化や「聖遺物」としての悪用を防ぐため、直ちに親族へ渡されることなく東京拘置所の金庫に一時保管されました。
ここから、血縁者間での激しい法廷闘争が勃発します。教団主流派(アレフ)に近いとされる妻および次女・三女側は「慣習に従い配偶者や家族に引き渡すべきだ」と主張。一方、家族や教団と完全に絶縁し、自立して生活していた四女は「執行直前の指定」を根拠に引き渡しを求めました。2021年7月、最高裁判所第三小法廷は、執行直前の麻原の意向を認定し、四女への遺骨引き渡しを認める決定を確定させました。
司法の判断が確定したにもかかわらず、なぜ現在も遺骨は拘置所を出られないのでしょうか。その背景には、極めて現実的かつ深刻な治安上のリスクが存在します。
- 後継団体による強奪・聖地化の脅威:アレフをはじめとする主流派信徒が、遺骨を奪還して新たなモニュメントを建立し、信徒獲得の求心力にする恐れが排除できない。
- 四女自身の身辺警護と精神的負担:遺骨を引き取った瞬間に過激派信徒からの尾行や襲撃ターゲットとなる危険があり、個人での安全な管理が極めて困難である。
- 安全な散骨ルートの未確立:四女側は「海上にヘリコプター等から散骨し、地上に特定の聖地を残さない」解決策を模索しているものの、警備体制や費用、行政機関の協力枠組みの調整が難航している。
結果として、遺骨は四女の名義で管理権が確定していながらも、治安維持上の配慮から東京拘置所が事実上の保管を代行し続けるという、前代未聞の膠着状態が続いています。