大相撲の本場所で鳴り響く櫓太鼓には、時間帯と目的に応じた明確な叩き分けが存在します。主に朝に打たれる「寄せ太鼓」と、取組終了後に打たれる「跳ね太鼓」は、リズムも意味合いも大きく異なります。
開場を告げ観客を招き入れる「寄せ太鼓」
寄せ太鼓は、その名の通り「お客様を寄せる(集める)」ために打たれる太鼓です。本場所の朝、開場時刻に合わせて櫓の上で打ち鳴らされます。リズミカルで軽快なバチさばきが特徴で、遠くまで音が届くように甲高い音色を響かせます。朝の澄んだ空気の中に鳴り渡る寄せ太鼓は、これから始まる熱戦への期待感を高める合図となります。
一日の終わりと明日への再来を願う「跳ね太鼓」
全取組が終了し、土俵上で弓取式が終わると打ち鳴らされるのが跳ね太鼓です。「興行が跳ねる(終わる)」という言葉の語源でもあり、観客の無事な帰路を促すとともに、「また明日もお越しください」という感謝と再訪の願いが込められています。テンポの緩急が激しく、哀愁を帯びた独特の余韻を残すリズムが観客の胸を打ちます。
ここで重要なのが、「千秋楽(最終日)には跳ね太鼓を打たない」という厳格なしきたりです。跳ね太鼓は「明日の再来」を意味するため、翌日に興行がない千秋楽に打つことは禁忌とされています。千秋楽の弓取式が終わると、場内には静寂が訪れ、そのまま場所の幕が下りるという仕組みです。