物語は、主人公・小野浩史が幼少期に同級生の女子から投げかけられた一言――「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね」という強烈なトラウマから幕を開けます。この言葉によって笑顔を奪われ、極度の自己否定感を抱えたまま成長した浩史は、やがて様々な事情を抱えた女性たちと出会っていきます。
過食嘔吐を繰り返す女性、首絞めプレイを好む同僚、カルト的な趣味を持つ知人など、浩史の前に現れるのはどこか心に傷や欠落を抱えた人物ばかりでした。浩史は彼女たちを決して否定せず、むしろ求められることに自身の存在意義を見出していきます。
やがて浩史は、運命の女性であるアスカと出会い、同棲生活をスタートさせます。しかし、アスカは深刻なうつ病を患っており、感情の起伏の激しさと突発的な行動で浩史を振り回します。どれほど振り回され、傷つけられても、浩史はアスカを愛し、彼女のすべてを受け止めようと必死に奔走しました。共に過ごした歳月は6年間にも及びます。
物語のクライマックスにおいて、二人の関係は突如として終焉を迎えます。精神的に追い詰められ、浩史の部屋から突然姿を消したアスカ。必死の捜索の末に再会を果たしたものの、アスカの口から告げられたのは冷酷な拒絶ではなく、あまりにも切ない自立への決断でした。
「浩史と一緒にいると、甘えてしまって自分が駄目になる」。共依存の心地よさに溺れることを拒み、浩史の前から立ち去るアスカを見送りながら、浩史は駅のホームで立ち尽くします。ドラマの最終回では、去りゆくアスカの背中を見つめながら、浩史が封印してきた「笑顔」を取り戻す瞬間が描かれます。それは他者から「虫の裏側」と揶揄された不格好な笑顔でありながら、自らの傷だらけの半生をすべて肯定する、魂の救済の結末でした。