結論から言えば、コント「南大阪のカスカップル」の力と綾香に特定の単一の実在モデルは存在しません。しかし、それは「完全な創作の架空人物」という意味では決してありません。盛山晋太郎が生まれ育った大阪府堺市をはじめとする南大阪エリアにおいて、彼が10代から20代にかけて毎日のようにすれ違ってきた「無数の地元ヤンキーカップルの記憶」を徹底的にコラージュした結晶です。
バラエティ特番や舞台裏インタビューにおいて盛山自身が語った証言によると、学生時代に立ち寄ったコンビニの駐車場、ドン・キホーテの駐輪場、浜寺公園周辺のたまり場には、力そのものの風貌をした少年たちが無数に存在していました。盛山は彼らの威嚇するような歩き方、首の角度、意味もなく鳴らす原付のアクセル音、そして独特の抑揚を持つ泉州弁のイントネーションを身体感覚として蓄積していたのです。
一方、彼女の綾香を演じるリリーは岡山県出身であり、生粋の南大阪育ちではありません。しかし、リリーは大阪進出後に盛山の地元仲間や街角のギャルたちを観察し、その「感情を削ぎ落としたような低いトーン」「煙草を吸う指先のダルさ」「キレた瞬間に見せるドスの利いた濁音」を完璧にトレースしました。リリーの憑依的な演技力が加わったことで、単なるモノマネ芸を超えた「どこかに絶対に生きている二人」という実在感が確立されたのです。