インターネットの検索サジェストで頻繁に見かける「志な乃 閉店」の文字。結論から言えば、九段下の「志な乃」は閉店しておらず営業を継続しています。ではなぜ、このような噂が一人歩きしてしまったのでしょうか。飲食業界の動向と現場取材から、3つの明確な背景が浮かび上がってきます。
第1の要因は、都内各地に存在した暖簾分け店・系列店の統廃合です。かつて「志な乃」の名を冠した店舗は、新宿御苑前や神楽坂、横浜など複数展開されていました。しかし店主の高齢化や建物の老朽化に伴い、近年にかけて惜しまれつつ幕を下ろす店舗が相次ぎました。それらの閉店ニュースを目にした人々が「志な乃が閉店した」と広く記憶し、九段下の店舗と混同したことが噂の大きな引き金となっています。
第2の要因は、手打ちの仕込み量に応じた営業時間と休業日にあります。職人が粉から手打ちするため、1日に提供できる杯数には厳格な上限があります。仕込み分が売り切れた時点で昼営業が前倒し終了することや、仕込みの都合による臨時休業が重なった際に、訪れた客が「シャッターが閉まっている=閉店したのでは」とSNS上で発信したことが誤解を増幅させました。
第3に、後継者不足や事業承継という飲食業界全体の構造的リスクです。街場の名店が高齢化を理由に次々と看板を下ろす昨今、客側の心理として「いつ閉まってもおかしくないのではないか」という予期不安が検索行動に直結している側面があります。しかし現地店舗では、職人の矜持をもって日々麺が打たれており、暖簾は力強く守られています。