春菊特有の香りと苦味は、自律神経に働きかけて胃腸を整える「ぺリルアルデヒド」や「ピネン」といった精油成分、そしてポリフェノール類に由来します。これらは生の段階では爽快なアクセントですが、熱を加えすぎると細胞壁が破壊され、細胞内の苦味成分とアクが外へ溶け出し、さらに揮発性の高い芳香成分だけが失われてエグ味だけが口内に残る結果となります。
料亭や割烹の厨房で行われている春菊のおひたしプロの作り方において、葉への加熱はまさに「一瞬」です。茎と葉では組織の密度が全く異なるため、均一に火を通そうと同時に鍋へ放り込むのは失敗の典型例と言えます。
具体的な茹で分けの手順は極めてシンプルです。まず、たっぷりの熱湯(2リットル程度)に塩小さじ1(約1%濃度)を加えます。沸騰した湯に対し、手で持ったまま「茎の部分だけ」を先に沈めて約10〜15秒カウントします。その後、全体を湯の中に沈め、葉の部分はわずか「10秒」泳がせるだけで十分です。全体で20〜25秒を超えないタイミングで素早く引き上げます。
引き上げた直後の温度管理も決定打となります。余熱による過加熱を防ぐため、氷水を用意しておき、即座に落として一気に急冷します。これにより鮮やかな緑色を固定するクロロフィルの変色を防ぎ、シャキッとした歯ざわりと澄んだ香りを閉じ込めることが可能になります。