ジェットコースターが最高到達点から急降下する際、下腹部からみぞおちにかけて胃や腸が持ち上がるような感覚が生じます。この現象の主因は、重力加速度に抗する力が抜けるマイナスG(無重力〜負の加速度状態)にあります。
人体内部の臓器(胃、大腸、小腸など)は骨や筋肉にガチガチに固定されているわけではなく、腸間膜と呼ばれる膜組織で体壁に吊り下げられています。コースターが急激に落下運動へと転じる際、外枠である骨格や皮膚は座席とともに下方へ引っ張られますが、柔軟な内臓組織は慣性の法則によってその場に留まろうとするため、結果として体内で数センチ上方へ浮き上がります。
この急激な位置ズレが自律神経や内臓受容器を刺激し、脳に「身体の平衡が崩壊した」という警報シグナルを送ることで、激しいフワフワ感や不快感を認識させます。つまり、浮遊感の根本的な原因は心理的な恐怖心そのものではなく、体内における物理的な臓器の移動に起因しているのです。