アカシジアは、ギリシャ語で「座らないこと(a-kathisia)」を語源とする神経精神疾患の用語であり、日本語では「静座不能症(せいざふのうしょう)」と訳されます。自覚的な強い焦燥感や不穏感とともに、じっと座ったり横になったりしていられない運動不穏状態を呈します。
医学的には、パーキンソン病症状やジストニアなどと並ぶ「錐体外路症状(EPS)」の代表格として位置づけられています。脳内の運動機能を制御する大脳基底核や中脳辺縁系において、神経伝達物質であるドパミンの働きが急激にブロックされることで、運動制御のブレーキが利かなくなり、身体を動かさずにはいられない衝動が暴走するのです。
アカシジアの厄介な点は、「心(精神)の焦燥」と「身体の運動衝動」が同時に襲いかかってくる点にあります。具体的な臨床像は以下の通りです。
- 自覚症状(内的不穏):「足の奥がむずがゆい」「身体の中から得体の知れないエネルギーが突き上げてくる」「胸が締め付けられるようにソワソワして発狂しそうになる」といった主観的な苦悶感。
- 他覚症状(運動症状):椅子に座っても貧乏ゆすりを続ける、足を組んだり外したりを繰り返す、部屋の中を行ったり来たり徘徊(はいかい)する、立っているときに足踏みや体重移動を絶え間なく行う。
患者自身も「なぜ動いてしまうのか」を論理的に説明できないため、周囲から単なる精神的なパニックやマナーの欠如と見なされてしまいがちです。しかし、これは純粋に薬理学的な脳内シグナルの異常によって生じる身体反応です。