千葉都市モノレールの歴史を語るうえで避けて通れないのが、長年にわたり議論が紛糾した「延伸計画の凍結」という決断です。当初の基本計画では、県庁前駅から市立青葉病院・千葉大学医学部方面への延伸、さらには穴川駅やスポーツセンター駅からJR稲毛駅、稲毛海岸駅へと至る複数ルートの延伸構想が存在していました。
しかし、千葉市が設置した有識者検討委員会による綿密な再評価の結果、2019年9月に延伸計画の正式な断念・見直しが発表されました。計画がストップした最大の理由は、インフラ事業の妥当性を示す指標である「費用便益比(B/C)」が基準値を大幅に下回ったことにあります。
検討委員会が算出した試算によると、病院ルート(県庁前〜市立青葉病院間)の建設には概算で約240億円以上、稲毛ルートには数百億円規模の巨額投資が必要と判明しました。一方で、沿線の少子高齢化予測や既存の路線バス網との競合を鑑みると、投じた公費に見合う需要は見込めず、B/C値は事業継続の目安となる「1.0」を大きく下回る「0.3〜0.5程度」に低迷したのです。
公の場で行われた諮問会議において、当時の市政関係者は「将来世代に過度な財政負担を残すことは許されない」と苦渋の決断を表明しました。交通弱者の移動手段確保という大義名分はあったものの、冷徹な採算性シミュレーションが計画凍結の決定打となった現場の記録が残されています。