物語の根底にあるのは、格式高い王宮で冷徹なエリートとして振る舞う主人公が、ある運命的な「食」や「対象」と巡り合うことで始まる二重生活のドラマです。周囲には決して見せられない無防備な一面と、それを共有することになったヒロイン(または相棒役)との奇妙な共犯関係が、サスペンスとコメディの絶妙なバランスを保ちながら展開します。
前半の導入部では軽快なドタバタ劇として笑いを誘う一方、物語が進むにつれて「なぜ彼がそれほどまでに特定の対象に執着するのか」という過去のトラウマや王家の確執が明かされていきます。ネタバレに配慮しつつ触れるならば、単なる食道楽ではなく、主人公の人間性を取り戻すための切実な通過儀礼として描かれている点が、本作を名作へと押し上げている要因です。