ネット上の経営情報や簡易な会計解説では、「一般管理費比率は低ければ低いほど優秀な経営である」という言説が頻繁に語られます。しかし、これは経営の実情を無視した極めて危険な誤解です。
一般管理費を極端に切り詰めている企業の内情を調査すると、経理や労務の手続きがブラックボックス化し、法令違反や横領リスクを検知できない脆弱なガバナンスに陥っている事例が少なくありません。必要なバックオフィス投資を怠った結果、2020年代半ばから急速に進んだ電子帳簿保存法やインボイス制度への対応で致命的な遅れを取り、かえって過重な修正コストを強いられた企業も実在します。
また、成長戦略としてDXや生成AIツールの全社導入を進めている企業では、一時的に一般管理費率が数パーセント上昇することがあります。しかし、これは業務効率を劇的に改善し、将来的な人件費の伸びを抑制するための「前向きな投資」です。
決定的な判断基準は、「その費用が将来の粗利拡大やリスク回避に寄与しているか」、それとも「単なる過去の慣習で垂れ流されている死に金か」という点に尽きます。比率の低さそのものを目的に設定して間接部門を締め上げると、優秀な管理職の離職を招き、組織の崩壊を招来することになります。