厚生労働省の死因統計を詳細に分析すると、日本の年間死亡者数において肺炎および誤嚥性肺炎による死亡は年間10万人を超える規模で推移しています。とりわけ誤嚥性肺炎は単独の疾患分類としても上位に定着しており、その犠牲者の95%以上が75歳以上の後期高齢者で占められているのが動かしがたい現実です。
一般的に、若年層や基礎疾患のない成人であれば、肺炎球菌などによる市中肺炎を発症しても抗菌薬治療によって95%以上が治癒します。しかし、誤嚥性肺炎の高齢者死亡率は入院時時点で約10〜15%に達し、さらに退院後を含めた1年以内の追跡データでは、80代90代の生存率が50%前後にまで落ち込むケースが珍しくありません。この数字の厳しさは、疾患そのものの毒性だけでなく、患者が抱える背景リスクの深さに起因しています。
現場の呼吸器内科医が異口同音に指摘するのは、誤嚥性肺炎の余命と予後を決定づける要因が、肺の局所的な炎症規模だけではないという点です。心不全、腎機能低下、糖尿病、そして脳梗塞後遺症や認知症といった複数の基礎疾患が複雑に絡み合うことで、抗菌薬による病原菌の制圧が成功したとしても、心不全の悪化や多臓器不全を併発して命を落とすケースが後を絶ちません。