ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「皮膚科で相談したら保険で安く取れた」「裏ワザを使えば保険が効く」といった真偽不明の情報が飛び交っています。しかし、公的医療保険制度の原則に照らせば、受診者が希望しただけで無条件に保険が適用されることは制度上あり得ません。
皮膚科や形成外科でほくろ切除が保険診療として認められる条件は、厚生労働省が定める医療保険のルールに基づき、「疾患の治療」と認められる場合に厳しく限定されています。具体的には以下の3つのパターンのいずれかに該当するかどうかを、担当医が客観的・医学的に診断します。
第1に、悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞癌などの皮膚悪性腫瘍が疑われるケースです。「急激にサイズが拡大している」「左右非対称で輪郭がギザギザしている」「色むらがある」「直径が6ミリを超えている」といった病変は、早期の病理診断が生命に関わるため、最優先で保険適用の切除対象となります。
第2に、日常生活における機能的障害が生じているケースです。たとえば「髭剃りのたびに刃が当たって出血を繰り返す」「洗顔や衣服の着脱時に引っかかって激しい痛みを生じる」「まぶたの縁にあり視野を狭めている」といった客観的な不都合がある場合、病変の除去は美容目的ではなく機能回復の治療と見なされます。
第3に、慢性的な炎症や細菌感染を繰り返しているケースです。ほくろの直下や周辺に炎症が生じ、ただれや痛みが治まらない病態も保険給付の正当な対象です。
一方で、「顔の印象を明るくしたい」「写真を撮るときに目立つから消したい」という動機は、医学上すべて「整容的改善(美容目的)」と分類されます。この場合、どれほど本人が精神的な苦痛を感じていても公的医療保険は使えず、全額自己負担の自由診療(自費)となります。保険適用を無理に迫る行為は、医療機関に対して不正請求を強要することと同義である点を認識しておかなければなりません。