なぜ宿泊施設はわざわざお風呂のない部屋を設けているのでしょうか。その背景には、建物の建築構造と宿泊ビジネスのコスト構造に直結する合理的な事情が存在します。アウトバス客室に風呂がない理由を紐解くと、主に以下の3つの要因に集約されます。
第1に、給排水配管の設備投資とメンテナンスコストの大幅な削減です。客室ごとに給湯・給水管や排水トラップを引き込む工事は、建築費全体の大きな割合を占めます。配管を館内の一区画(大浴場や共用シャワー)に集約させることで、新築時やリノベーション時の初期投資を数千万円単位で圧縮できます。さらに、経年劣化による水漏れ事故のリスク管理や定期清掃の負担も大幅に軽減されます。
第2に、客室面積の有効活用です。一般的なビジネスホテルの3点ユニットバスは、およそ2畳(約3.3平米)前後のスペースを専有します。この水回りスペースを削ることで、狭小なフロア面積であっても客室数を増やしたり、あるいは同じ平米数でも居住空間を広々と設計したりすることが可能になります。
第3に、老舗旅館や温泉街の歴史的経緯です。全国展開する格安温泉リゾートチェーン(伊東園ホテルズや大江戸温泉物語など)の客室に見られるアウトバスは、もともと「温泉旅館の醍醐味は名物の大浴場や露天風呂に浸かること」を前提に設計された旧館の名残であることが珍しくありません。部屋風呂の需要が低かった昭和期の建築様式がそのまま維持されているケースです。
水回りの清掃スタッフにかかる人件費やアメニティ補充の手間が削ぎ落とされる結果として、宿泊費が安い理由と詳細まとめを見ても、同等クラスのインバス部屋と比較して1泊あたり2,000円〜5,000円前後、割合にして20%〜40%ほど安価な宿泊料金が実現しています。