日本のパスポートは、外務省公式発表の区分において大きく「一般旅券」「公用旅券」「外交旅券」などに分類されています。普段私たちが手にするのは一般旅券ですが、国家的な使命を担う公務員や外交官には、一般とは全く異なる色の冊子が交付されます。
街中の旅行代理店や一般の申請窓口では決して手に入らない特殊旅券を含め、日本には実質的に4つの主要カラーが存在します。それぞれの色が持つ法的な位置づけと発行目的を整理すると、国家の外交システムそのものが浮かび上がってきます。
定番であるパスポート赤と青の違いは、端的に言えば「有効期限の長さ」です。赤色は有効期限が10年の一般旅券、紺色(青)は5年の一般旅券として発行されます。2022年の民法改正に伴う成年年齢引き下げにより、現在では18歳以上であれば10年用(赤)と5年用(青)のいずれかを自由に選択できます。一方で、成長による顔貌の変化が大きい18歳未満の未成年者は、国際規格上の本人確認精度を担保するため5年用(青)しか申請できません。
公の場に滅多に姿を現さないのが「緑色」の冊子です。このパスポート緑色の理由は、国会議員や特別職・一般職の国家公務員、独立行政法人国際協力機構(JICA)の職員などが、公務で海外へ渡航する際にのみ交付される「公用旅券(Official Passport)」だからです。公用旅券は国の公務を円滑に行うためのものであり、プライベートな観光旅行には一切使用できません。公務を終えて帰国した後は外務省に返納することが法律で義務付けられています。
さらに格式が高い存在が、濃い茶色や黒色に見える「外交旅券(Diplomatic Passport)」と、特殊な状況下でのみ発行される緊急用の旅券です。ネット上では「富裕層向けのブラックカードのような特別旅券が存在するのではないか」と囁かれることがありますが、これこそがパスポート黒の真相です。黒褐色を基調とした外交旅券を所持できるのは、皇族、内閣総理大臣をはじめとする閣僚、最高裁判所長官、特命全権大使などの外交官とその配偶者に限られます。外交関係に関するウィーン条約に基づき、不逮捕特権や税関検査の免除といった強力な外交特権が付与される世界最高峰の身分証明書です。