「せっかくフルサイズ一眼で撮ったのに、スマホで見るとスマホのカメラで撮った写真と解像感が変わらない」と感じた経験はないでしょうか。そこには、メーカー側が施した初期設定のトラップと、ユーザー側の認知バイアスが関係しています。
高画質そのまま転送の真相を探ると、カメラアプリの初期設定において、転送画像サイズが意図的に「2M(約200万画素、フルHD相当)」にリサイズされているケースが全体の8割以上を占めています。メーカーがリサイズを初期値にする理由は極めて明快です。3,000万画素を超えるオリジナル画像(1枚あたり約15MB)をWi-Fiで転送すると、1枚につき10秒以上の時間を要し、「転送が遅い」「アプリがフリーズする」というユーザーからのクレームに直結するためです。
ここで見逃せないのが人間の「認知バイアス」です。6インチ前後のスマートフォンの高精細ディスプレイ(Super Retinaや有機EL)でプレビューする限り、200万画素の画像であっても画面密度(ppi)が高いため、人間の目には十分にシャープで美しく見えてしまいます。しかし、この写真を後からトリミングしたり、iPadやPCの大画面で閲覧したり、あるいはL判以上にプリントした瞬間に、粗いディテールと破綻したグラデーションが露呈します。
一眼レフの圧倒的な階調や被写界深度の美しさをそのままスマホ環境へ持ち込むには、アプリ側の転送設定を「オリジナルサイズ(リサイズなし)」へ手動で変更するか、そもそもリサイズ処理が介在しない物理リーダー経由での取り込みを行うのが唯一の対抗策です。また、本格的な色補正を行うユーザーであれば、RAWデータをスマホ版Lightroom等に直接取り込むフローを構築することが、一眼カメラ本来の投資対効果を回収する絶対条件となります。