仏壇でのお参りにおいて、最も多くの人が無意識に犯している間違いがおりんを鳴らすタイミングとマナーです。
一般的に「仏壇の前に行ったら、まずおりんを『チーン』と鳴らしてから合掌する」と思い込んでいる方が大半を占めます。しかし、仏教寺院の僧侶や仏事コーディネーターの見解を総合すると、「お経(読経)をあげない一般の弔問客は、実はおりんを鳴らす必要がない」というのが本来の正式な作法です。
おりん(鈴)という仏具は、本来「読経の開始・区切り・終了」を知らせる合図として打ち鳴らす打楽器です。故人を呼び出すための呼び鈴やチャイムではありません。お経を唱えない静かな合掌拝礼において、おりんを打ち鳴らす教義的根拠は存在しないのです。
特に浄土真宗では「勤行(読経)の時以外におりんを鳴らしてはならない」と明確に規定されています。知らずに浄土真宗の門徒宅でおりんを強く連打してしまうと、作法を知る遺族からすれば心の中で違和感を抱かれる原因となります。
もし読経を伴わない一般的な弔問で合掌する場合は、以下の手順を守るのが極めて洗練された大人の振る舞いです。
- ろうそくからお線香に火を灯し、手であおいで消す。
- 香炉にお線香を立てる(あるいは寝かせる)。
- おりんは鳴らさず、静かに胸の前で両手を合わせ、目を閉じて一分ほど祈りを捧げる。
- 最後に深く一礼して下がる。
もちろん、地域の慣習や家庭ごとの慣例で「どうぞおりんを鳴らしてお参りください」とリン棒を手渡された場合は、頑なに拒む必要はありません。その際は、強く叩きつけるのではなく、おりんの縁の上部をリン棒で外側(または内側)から「コォーン」と静かに撫でるように1回だけ鳴らすのが良識的なマナーです。