理念の崇高さとは裏腹に、職員室からは悲壮な声が聞こえてきます。SNSや教育関係者のコミュニティ、各種意識調査では、「観点別評価の導入以降、放課後はエクセルへの評価入力作業に忙殺されている」「毎時間、3観点すべてを見取ろうとして授業に集中できない」といった告白が連日噴出しています。文部科学省の教員勤務実態調査や教育シンクタンクの追跡データでも、学習評価にかかる事務負担が時間外勤務の温床になっている現実が浮き彫りになっています。
ある公立中学校の教員は手記でこう明かしています。「毎時間、30人以上の生徒全員の『主体的に学習に取り組む態度』をABCで判定しようとした結果、授業中に生徒の表情を見る余裕がなくなり、チェックリストを埋めるだけの監視員になってしまった」。この告白は、指導と評価が一体化するどころか、評価が指導を圧迫して本末転倒に陥っている典型例です。
組織社会学および教育心理学の視点からこの現象を解剖すると、「測定への過剰適応(グッドハートの法則)」が起きていることが分かります。指標が目標そのものにすり替わったとき、人は本来の目的を見失い、数値を揃えるための辻褄合わせに終始します。「客観的な証拠(エビデンス)を教育委員会や保護者に示さなければならない」という防衛心理が、過剰なワークシートの回収や小テストの乱発を招き、結果として子供たちの主体的な探究時間を奪っているのです。