ここで、ネット上で散見される典型的な誤解を是正しておかなければなりません。最も多い誤解は「プッチ神父は世界征服を企んでいた」「DIOに騙されて利用された哀れな操り人形にすぎない」という解釈です。しかし、原作の描写を緻密に追えば、この理解は本質から外れていることが分かります。
第1に、プッチの行動原理は私利私欲や支配欲ではなく、100%の純粋な「人類への愛と救済」に基づいていたという点です。彼にとって、運命に怯え、予期せぬ不条理に引き裂かれる人間こそが救われるべき存在でした。あらかじめ未来に起きるすべての出来事を肉体に記憶させ、宇宙を一巡させることで「明日死ぬと知っていても、覚悟ができているから幸福である」という精神境地に全人類を到達させようとしたのです。これこそが、DIOとプッチの言う「天国」の正体でした。
第2の盲点は、DIOとプッチの関係性です。DIOは歴代の部下を肉の芽や恐怖、金銭で支配していましたが、プッチに対してだけは対等な友として接し、足の不自由を治す奇跡を与え、ノートを託しました。しかし、これも「崇高な友情」と美化することはできません。DIOは自らがジョースター家に敗北して消滅することすら計算に入れ、プッチという「最も信仰深く、野心を持たず、しかし目的のためには手段を選ばない男」を、死後の自身の復活と目的完遂の道具として極めて冷徹に選別していたのです。